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2004年 「健康靴の先進国 ドイツ・オランダに行ってきました」編
一日目~2004年3月7日/成田 →オランダ・アムステルダム →ドイツ・ニュルンベルグ
しかし、店を8日間も空けてしまっていいのだろうかいうのは・・・それはそれ!気がつくと成田空港の待ち合わせ場所に時間通りに到着している自分がいました。
ツアー同行者は同社のM社長さんとHさん、神奈川の超有名店よりⅠさんと、同じく神奈川県のわかまつ靴店・ジャパニーズマイスター義肢装具士のMさんです。
午後一番のJAL便に乗り込み恐怖のエコノミーシートで12時間のフライト・・・ほんとこれさえなければ・・・。
私の席はラッキーなことに通路側でした・・・が、横のでっかいオランダ人は、30分に一度トイレに行くのでいちいち席を立たなければならず、また、少し前あたりで、これまた2メータークラスのオランダ人が、10人ぐらいでパブ状態で大騒ぎ・・・。
もう、「寝れるものなら寝てみろという状況!」が12時間続き・・・疲れました。
そして、何とか機はアムステルダムへ・・・本当に簡単な入国審査(パスポートを斜め読みして、コンニチハ!と係官に日本語で言われただけ)を済まして、また、乗り換え・・・KLMのプロペラ機!で1時間半ほどのフライトでドイツ・ニュンベルグへ到着しました。
ホテルで通訳のRさんと合流、到着は深夜でしたので、ホテルのバーで地ビールで乾杯!・・・で、すぐ寝ました。
二日目~2004年3月8日/ドイツ・ニュルンベルグ →バンベルグ →ハッスフルト
ヨーロッパ最初の朝食は・・・駅のマクドナルドでした。
英語でオーダーOKかなと思ったのですが、なぜか「eat in」が通じず最初から苦戦。
ホテルをチェックアウト後、チャーターのバンに乗り込み、まずは一軒目のショップ「Schuhhaus Barthelmess」に到着いたしました。
こちらのお店はニュンベルグ市内にある老舗的な高級靴の専門店です。
店内には日本でお馴染みな、「ガンター」「メフィスト」「ゾリドォス」などのブランドが並びます。
スタイルとしてはお店の方がお客様の要望と足を見て合いそうな靴を5足ぐらい出してフィッティング・・・というオーソドックスなパターンです。
このやり方は在庫が山ほどいるやり方なのですが、こちらは50坪ほどのお店で同等の地下室があり、在庫が満載!という日本でもドイツでも靴屋は真剣にやると儲からん仕組みになっているな~・・・ということを再認識しました。
あと、「フィンコンフォート」というブランドについてですが、やはり、価格・イメージ共に別格扱い、車でいえば「ベンツ」でした。
・・・で、それからバンでアウトバーンを走り一時間程で次の目的地バンベルグのショップ「Schuhhaus Bitter」に到着しました。
こちらは、整形靴マイスターのショップで、しかも、親子揃ってのマイスターといういかにもドイツ的なお店でした。
こちらは、健康靴以外にもオシャレな小物やバックなども取り扱っており、地域一番店というような雰囲気です。
しかし、裏へまわると普通の靴屋とまず違う点、「足の診察室」があり、こちらでは完全に地元の医師と提携しており、特に糖尿病などではマイスターより医師に靴についての提案を行うようなスタンスで運営されているそうです。
また店の奥に入ると工房があり、3人ぐらいの職人の方がマイスターの指示に従い、忙しく作業をされていました。
ドイツの保険制度では足に問題のある方は医師の指示で、およそ25万円程度の上限で靴を作成することができ、医師とリンクするかたちで靴を作成するのが整形靴マイスターとなっています。
靴を一足仕上げるということは本当に複雑な工程を経てできるものですが、今回はごく簡単な流れで・・・。
最初に行ったのが新第二工場です。日産7000足体制を目指し、新しく増設された施設です。
まずは材料ということで小学校の体育館ぐらいの大きさに、積み上げられた革・革・革・・・。
世界中から輸入しているようですが、ライニング(内張り)に使う豚革はなんと、日本製との事・・・びっくりしました。
次は革をその靴に合わせた金型で型抜きします。
どこの部分でも抜けばいいというものではなく、革の最良の部分を吟味し型抜きします。
ちなみに日本の職人さんでは革見10年といいまして、この技術を覚えるのにそれだけの年月が必要だとされています。
さらにはお針子さん軍団によるミシン掛けです。
しかし、皆さん、仕事に没頭しているのか国民性なのか、私が作業を覗き込んでも、「・・・」。
・・・お忙しいとこすいませんでした・・・。
それから、第一工場へ戻り、仕上げの段階に入ります。
まず、靴を型入れします。
このときに革に癖をつけるために蒸気などで加熱し、革を柔らかくします。
そして、靴のアッパー(上)と靴底をくっつけます(フィンコンフォートは複数の接合方法を採用しているので、全てがこの限りとは限りません)。
また、現代の靴は可塑剤(熱に反応して柔らかくなったり硬くなったりする)を多く使用しているので、今回はかなり、はしょっていますが、工程は本当に複雑怪奇となっています。
しかし、この工場内にいると暑さと強い湿気が体にまとわりつきます。さらに型入れした靴を型から出すのは力仕事!だから工場はTシャツを着た男・男・男と男の仕事場という感じです。
最後に、靴底など塗装の必要のあるものは作業し、検品、仕上げをします。
と、ここで会長のボルターさん登場!フィンコンフォートブランドの材料よりのこだわりや最良の靴を仕上げるための製法へのあくなき追求などを力説されておりました。
以上、流れについてはかなり、飛ばしてありますが感想としては、「靴作りに妥協していない」ということです。
他のメーカーが市場性や採算性で材料や製法を安易に仕上げるなか、この会社については理想の健康靴を造るべく、材料・製法については妥協せずに最良のものを使うという簡単だけど真似のできないこと実践しているというのが印象でした。
まあ、その分価格が高くなりますが、オンリーワンですし私は納得です。
で、夜はホテルのあるバンベルグに戻り、会長さんご家族のご招待で地元のパブにて「燻製ビール」など、名物料理をを頂きました。
また、シナップス(蒸留酒)などもおいしく、したたか酔っぱらって(10分に一杯ずつ飲め!と言われたので)、その日は締めといたしました・・・いや、もう一軒行ったか・・・記憶がないので・・・。
しかし、ドイツでは何を食べても美味しかったなぁ~。
奥の帽子の人は壁のマイスター?だそうです
三日目~2004年3月9日/ドイツ・バンベルグ →ウルツブルグ →フランクフルト →オランダ・アムステルダム
この日は「Schon&Endress Schustergasse」を訪ねました。
こちらは地元の一番店で市内に複数の店舗を持つ一流店です。
代表的な店舗を何店かという事で最初のお店はきれいな2階建ての靴屋程度に思っていたのですが、病院のような趣の施設を併設しており、そこにはマイスターが駐在し、必要であれば医師が診察を行いっておったり、ドイツ式のフスフレーゲ(足の手入れ)を行っておったりと足に関しての複合施設というような位置付けのお店でした。
次の店舗は高級靴のデパートというイメージで2階建ての店舗に「メフィスト」や「ティンバーランド」などのインショップが入っており、はては狩用のブーツコーナーとか日本では縁のなさそうなものまで何でもそろっていました。
最後にこちらでやられている工房へおじゃましたのですが、敷地も広く3階建てのビルをフルに使っており、工房というより工場に近いイメージでした。
もちろん、マイスターがおり個別の整形靴を造っているのですが、規模が大きく、日本の靴工場と同等ではないだろうかというような規模でした。
四日目~2004年3月10日/オランダ・アムステルダム →ロッテルダム →ドゥルーネン →ハルトゲンボッシュ
この日は最初にロッテルダムに移動し、ある意味今回一番の衝撃を受けた「Ortho Schun Technik」へ移動しました。
何がすごいかというと、これはもう靴屋じゃありません。「靴」という物を核とした総合的な施設です。
その施設の中に「靴店・診療所・工房・足のケア・修理店・装具の販売」など腰から下で困ったらここにおいで的なもので、もちろん保険制度の対象となっており、行った時間は早かったのですが、ざわざわと大盛況という、日本では考えられない施設でした。
結局、ドイツでもそうなのですが、「靴」というものが本当に体に重要なものであり、文化としてこれが理解されており、こちらの様な施設が成り立ち、利用者が多いという・・・。
何時になったら日本は追いつくのかなと本当にうらやましく思ってしまいました。
まぁ、日本人の靴文化は戦後からで、50年として、こちらは500年ぐらいの歴史があるので・・・単純計算であと450年か!でも、俺は死んでるな・・・。
最後にお約束の大きな工房があり、材料も日進月歩・・・日本ではまだ紹介されてない新しいマテリアルなども見受けられました。
しかし、この施設については、このぐらいの説明ではゼンゼン足りないぐらいの内容があり、できればもう一度行ってみたいなと思います。
・・・それから、その日はバンでドゥルーネンへ移動し「Durea社」の工場見学へと向かいました。
「Durea社」はドゥルーネンの工業団地のような雰囲気のなかにありとても静かなところでした。
ご案内いただいたのは営業面での最高責任者のカールさんです。
こちらでは現在、商品の企画・開発とサンプルの作成のみで生産は国外に2ヶ所工場をもっており、そちらで行っているとの事でした。
ドゥレアというブランドについては当店でもブーツなどを取り扱っているのですが、今回工場を見学して思ったのですが、本当にいい材料と最新の理論と技術を結合させて靴を作っているというのが印象でした。
工場のラインを一通り見学させていただいたのですが、また、ドイツとは違った一貫した個性というものが靴にあり、それがしっかりとドゥレアらしい大人のきれいな靴として仕上がっていました。
これから当店でも取り扱いを増やしていきたいブランドです。
最後にカールさんが「この近くにとても綺麗な村がある」との事でご案内抱いたのですが、日本人が思うおとぎ話のようなオランダがそこにはありました。
この国はプライベートでまたゆっくり来たいですね・・・って、ムリか・・・。
その晩はカールさんのご招待でオランダ料理を頂いたのですが、その味がさらにこの国の好印象を高める美味しさでした。
五日目~2004年3月11日/オランダ・ハルトゲンボッシュ→ ドイツ・デッセルドルフ
なんと、カールさんの運転する車で同乗させて頂いて陸路オランダ→ドイツの国境越え・・・。
とは言うもののEU間はフリーパスとなっているので、「えっ、いつ越えたの!」みたいな雰囲気であっという間にクリアしました。
そして、到着した世界最大の靴の見本市が行われる「メッセ・デュセルドルフ」・・・。
東京の見本市会場など目ではない規模!現在もまだ、施設の拡張工事が行われています。
そして、ここに出店する靴メーカーの数が世界50カ国より1500社あまり!
東京の展示会でがんぱっても50社ぐらいで普段私はそれを2日間に分けて見ています・・・が、これは無理!大きすぎです!
取りあえず落ち着くために会場が見渡せるレストランでビールを一杯・・・冷静になって上から眺めてみたのですが・・・もう、イタリアゾーンなどは無視!スポーツも無視!健康靴一本で見て回ることにしました。
気を取り直して会場へ・・・気になるブースへ入ってみると・・・
「招待状は(英語)」 「ありません」
「それじゃあダメ!」 「エー!」
みたいな非常に難儀するメーカーから、
「はい、チョコどうぞ!」
みたいな、すごくフレンドリーなメーカーまでとにかくアタック!その日はカルチャーショックを受けまくりながら終日会場をさまよっていました。
・・・それにしてもいい靴たくさんあったなぁ・・・。
六日目~2004年3月12日/ドイツ・デュセルドルフ →ケルン
今日はフリーと言うことで寝ててもしょうがないので、自分ひとりで午前はデュセルドルフ・午後はケルンの靴店をまわってみることにしました。
*個人で紹介なくまわっているので、写真は撮れませんでした。
それこそディスカウントから百貨店のインショップまで15件程度行ってみたのですが、勿論、靴はピンキリ・・・しかし、お客さんを見ていて気がついたのですが、「ご自分の足を把握している」と言うことです。
サイズだけでなく、合う木型と言うものを意識して靴を探されています。
これは本当に大事なことで、「私、外反母趾だから5E」とか「簡単に履けるもの」とかで靴を探すのは間違いであると言う基本的な部分で「文化」と言うものを見た思いがしました・・・まぁ、というか、靴選びを間違うと全部体に帰ってくるので・・・知っているのでしょう・・・はい。
午後からは電車に乗りケルンへ。もちろん靴店もまわったのですが、ケルンといえば「ケルンの大聖堂!」なんというか荘厳と言うか威風堂々(少し違うか!)というか圧倒されます。
で、よせばいいのに塔を登ってみることにしました・・・そして、下の写真のような螺旋階段を休むことなく登り続けて(休むと階段が狭いので後ろの人が登れない)20分程度で最上部へ・・・確かに眺めはよかった(ライン川がバッチリ)が膝と腰が砕けそうになりました。
七・八日目~2004年3月13・14日/ドイツ・デュセルドルフ→ フランクフルト→ 成田→ 福岡
楽しく得るものも多かったこの旅行も後は帰るのみ!私の場合は3回飛行機を乗り換えて、高速バスで我が町の直方を目指します。
その所要時間は24時間と30分!飛行機の退屈さ加減からして、本音を言うとこのまま永住したい気分です。
しかし、やはり帰らないといけないので荷物をまとめデュセルドルフ空港へ・・・あとはもう、ただただ退屈なだけで帰りの日航機では行きに2回見た機内映画の「半落ち」をまた見て、これで「1.5落ちだな」などとつぶやいて、だいぶ自分が疲れているのに気がつきました・・・。
さて、今回の旅行の総括というような大層なものではないですが、自分が知っておったつもりの靴と言うものは、まだぜんぜん奥深く、いっそうの知識と技術の習得が必要であるという当たり前の結論となりました。
そして、得たものをお客様にフィールドバックしていける靴屋になりたいなとしみじみと思いました。
ぜひ、ヨーロッパには機会を設けて再訪問すべく、仕事の幅を広げていこうと思います。