「42.靴の加工・調整」カテゴリーアーカイブ

靴の甲パット作成です

春夏物のシーズンということで、たいへん忙しくさせて頂いておりますが、その合間をぬって工房での作業もこなしております。
本日は靴の甲べロの部分にパットを貼り付ける作業の実況でございます。

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お題はこちらのフィンコンフォートのショートブーツです。
お客様によっては、甲の低い方や細い方(片足だけとかも)がおられ、その個性に合わせて靴を微調整する必要があります。

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今回は「プラスターゾーテ」というマテリアルで、その甲パットを作成します。
甲パットの作成も今回の様なやり方から、いったん甲のパーツのミシン糸を抜いて中に柔らかい詰め物をして、再度ミシンをかける方法など、目的やご予算で使い分けています。

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まずは甲パットの形状に合わせてプラスターゾーテをカットします。

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で、靴とそのマテリアルにボンドを塗ります。

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十分に乾燥させて、ヒーターで温めてから足なりに形状をつけて張り付けます。

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手で圧着中・・・そして、余分な部分をカットします。

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グラインダーマシンで、フチをアール状に綺麗に仕上げます。

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(クリックで拡大します)

で、出来上がりです・・・簡単な工程ですけど、剥がれたりもありません。
そして、プラスターゾーテは適度にフカフカで心地よい素材です。

本当に色々なやり方があるのですが、今回は履いて頂いた後で部分的な厚みなどを調整できるように、プラスターゾーテを使った加工を行いました。
いろいろな足の個性に合わせて、引き出しはたくさん持っているつもりです・・・引き出しとは「靴の加工・調整の技術」のことであり、ほんの小さな加工でもそれが適正であれば、足と靴のマッチングを飛躍的に向上させることが可能です。

祖父の代は靴工房として当たり前にこの様な作業を生業とし、靴店3代目の私もより深く本道を極めるべく、今後も精進して参りたく思います・・・靴でお悩みの皆様は、ぜひ当店の技術をご活用下さい!

☆4月1日より閉店時間が「20時」に伸びました

☆5月の定休日・・・23日(水)
☆6月の定休日・・・20日(水)21日(木)

少し変わった「革底靴の滑り止め加工」など

ゴールデンウイークもあと2日・・・そして、今日はどこかに出かけたくなる素晴らしい春空!
まぁ、本日も店番の当方には何の関係もない話ですが・・・さて、本日はこちらのお靴のお話です。

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ShoeColour_PaintForato_Nero 37,800円(クリックで拡大します)

今年より扱い始めたイタリアのブランドで、高品位な材質を妥協しないレベルで仕上げつつ(ある意味マニアックに)、ハンドメイドらしさも残しているという・・・好きな人には私を含めてたまらない類の一足です。

もちろん靴底も革底・・・返りがよく、歩行時にまとわりついてくれるような心地よさがあります。

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(クリックで拡大します)

しかし、まぁ履いたことがある方はご存知でしょうが・・・雨の日などは滑ります。
私は雨の日に革底の紳士靴で運転をしている時に、ブレーキペダルを踏んだら「ヌルリ!」と滑って・・・シャレにならない事になるところでした。

ですので、当店では革底の靴の場合は「滑り止め加工」をしてある物しか仕入れないようにしており、こちらのShoeColourも前足部の丸い部分がゴム素材で、滑りが出ないようになっています(しかし、このブランドらしい凝った作りですね・・・)

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「普通の滑り止め加工」(クリックで拡大します)

思えばこの滑り止め加工は、地方によって言い方が異なるのですが「半張り」とか「メリソール」とかの名称で、靴修理では非常にメジャーな作業で私も靴屋を継いで、靴修理を始めた頃によくやった内容です。

普通は上の様な対滑性のある薄いゴムシートを貼り付けるのが、一般的なやり方ですが、今回はあるお客様のご要望で、少し変わった材質で滑り止め加工を仕上げました。

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(クリックで拡大します)

心地よさを変えずに滑らず、よく歩かれるので耐久性も・・・というリクエストより「前足部はフレキシブル、かつ、対滑性の高いビブラムの新素材」「カカトは耐久性を重視してドイツ靴修理では一般的なアストロスターという底材(もちろん滑りません)」を使い分けました。

このまま貼ると前足部の部分の厚みで、トウピッチと言われる踏み込み用の傾斜がなくなってしまうので、カカトを少し削って角度を変えて、そこも調整してあります・・・靴底だけ見るとスニーカーテイストの仕上げになっていますが、必ずやお客様には喜んで頂ける仕上がりになったかと思います。

ドイツ式の靴調整とかその一部での靴作りというものは、理論や方法が確立されているのですが、その過程に道具として「台所用品とか車の修理用工具」とかを引き出してきて便利に使っていたりします。

つまりは目的に対しての手段が、知識や技術に裏打ちされた上で非常に自由であり、お国柄のイメージと違って堅苦しくなかったりする(変にセオリーにこだわったりしない)ところが、私がドイツの靴文化から離れられないところでもあると思います。

今後も、ヨーロッパのいろいろな靴を仕入れて参りますが、良い意味でのドイツ靴で学んだ下敷きをお客さまのリクエストに反映させて、もっとお喜び頂けるように精進してまいりたく思います。

しかし、いい天気ですね・・・陽気の良さと有機溶剤の匂いで心地良くなってきましたので、本日は以上で~す~・・・。

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